この記事で解説していることは?
- この記事で「ビールの原料」について簡単に解説
- キーワードはたったの3つ:「主原料」「副原料」「日本の法律」
- ビールに米やコーンスターチが入っているのは邪道と考えているひとは必読
世界のビールブランドの特徴と歴史を徹底的に解説するレビューサイト「ファウンドビア!」。
今回のテーマは「シリーズ:初心者でもすぐわかる!ビールの原料編」と題して簡単にわかりやすく説明していきます。
それだけ覚えてしまえば問題無いのですが、この記事ではそれぞれの原料についてもう少し掘り下げて解説していきます。
この記事を読めばビールをより深く楽しみながら飲むことが出来ますよ。
結論
- ビールの原料は4つから出来ている
【麦芽】 =ビールの味を決める土台
【ホップ】=香りづけと殺菌効果を与える
【水】 =ビールの9割が水分で出来ている
【酵母】 =発酵させないとビールが出来ない! - 米やコーンスターチも原料じゃないの??
正しくは「副原料」
副原料はビールの出来上がりを補佐する素材
もくじ
1:ビールを作る原料「麦芽」「ホップ」「水」「酵母」の4つ
冒頭でお話したようにビールは4つの原料から作られるアルコール飲料であり発酵食品です。
メモ
▶「麦」 =主原料、ビールは大麦麦芽を使う
▶「ホップ」=主原料、アサ科の植物で大麻と同じ科目
▶「水」 =9割が水分、水質によって出来上がりが変わる
▶「酵母」 =微生物、麦汁をビールに変える
皆さんも聴いたことのある原料ばかりだと思います。
麦芽=発芽した麦の種子のことで、ビールの味わいを作る土台
麦芽というと、分かるようで分からないのが歯がゆいところ。
麦芽とはなにか?
それは「発芽させた麦の種子」を指します。
ポイント
▶ 麦芽って?
→麦(特に大麦)を収穫したあと、種子に水をやり発芽させたもの
▶ 大麦である理由は?
→糖分の素となるデンプンを多く含んでいる
→大麦の中で眠っている酵素がデンプンを糖分に変える力を持っている
=糖分に変えられれば、酵母がアルコールと炭酸ガスに変えてくれる
▶ 酵素と麦芽の関係って??
→大麦のままだと「酵素」は眠っている
→大麦を発芽させることで眠っていた「酵素」は目を覚ます!
=大麦を麦芽状態に持っていくことが必要
麦芽はモルトとも呼ばれ、ウイスキーの原料にも使われています。
というひとのために、もう少しだけ麦芽を解説していきましょう。
ポイント
<麦芽のカテゴリー>
▶ ベースモルト
→ビールの土台を作るためのモルト
→糖を作り出すために使う
→淡色でこれだけだとビールに色が付かない
▶ スペシャリティモルト
→濃淡様々なカラメル色をしたモルト
→色味とコク・甘みを付与したり大活躍
→よくベースモルトと一緒に使う
▶ 大麦以外のモルト(その他)
→小麦・ライ麦・オーツ麦など
→ベースモルトと一緒に使う
→ヴァイツェンなど特定のビール造りに
上記のカテゴリー毎に様々な銘柄のモルトがあります。
醸造家たちは、自分の作りたいビールに必要なモルトを組み合わせて配合を決めながらレシピを作っていきます。
ちなみに、モルトは専門のメーカーがあるほど。
日本の場合、多くを海外メーカーから輸入しているのが現状です。
この麦芽を素に、ビール醸造家は麦汁と呼ばれる糖分を抽出した甘い液体を作るのです。
作り出した麦汁に酵母を加えることでビールが出来上がるという流れになります。
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【ビールの知識シリーズ①】ビールの種類は2つ覚えればOK!わかりやすく解説します!
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メモ
<この章のまとめ>
▶ 麦芽=麦を発芽させた状態のこと
▶ 麦芽状態にすることでビールの素を作ることが出来る
ホップ=防腐効果と泡持ち・香りづけと多くの役割を担っている
続いてはホップの解説。
ホップって言われて形はなんとなーくイメージ出来るのかもしれません。
でも役割については「そういえば、なんだろう・・・」と思うひとが多い気がします。
ホップのココがスゴイ!
<ホップの凄さ>
① 腐りにくくする(防腐効果)
② 苦みと香りを与える
③ 泡持ちを良くする
④ ビールの濁りを抑える
<ホップの登場時期>
▶ 12世紀ごろからと言われている
→それまでは、ビールに薬草やはちみつなどを入れていた
<ホップの正体>
▶ アサ科カラハナソウ属つる性多年草植物
→ザックリ言えば麻や大麻と同じカテゴリーの植物
<産地>
▶ チェコ
▶ ドイツ
▶ アメリカ
その他日本を含む数か国で栽培が盛ん
ビール=苦い!となる要因がホップにあります。
なぜ苦くする必要があるのか?という点については今後追加予定の「ビールの作り方」で詳しく解説しますが
香り・泡持ち・防腐効果など色々な効能をビールに付与する際、ホップを煮出した熱い麦汁に入れる必要があります。
熱い麦汁の中でホップの成分が化学変化を起こし数々の効能といっしょに苦み成分も付与される流れになります。
そして、麦芽同様ホップにも数多くの種類が栽培されていて産地と銘柄によって香りがまったく違います。
ポイント
<ホップのカテゴリー>
▶ ビターホップ
→苦みの含有量が多い
→銘柄はマグナム(独)ナゲット(米)など
▶ アロマホップ
→ビールに強い香りを与える
→銘柄はシトラ・カスケード(米)
▶ ファインアロマホップ
→上記2つの丁度いいバランスを持っている
→銘柄はザーツ(チェコ)
※ 日本のブランドだと
→ソラチエース
→フラノエース
ちなみに日本ブランドである「ソラチエース」は当サイトでアメリカのブルックリンブルワリーがリリースしているブランドをレビューしました
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【レビュー】アメリカ ブルックリン ソラチエース:味の特徴とこんなひとにオススメ!
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ホップはビールの香りや苦みの方向性を大きく変える重要な原料です。
ホップだけでマンゴーのような香りから森林の香りなど実に様々な銘柄が栽培されています。
ビール中級者のかたはぜひ「ホップ」の銘柄と特徴を抑えたうえでクラフトビールを楽しんでみてはいかがでしょうか。
メモ
<この章のまとめ>
▶ ホップ=香りづけだけでなく泡持ちなど多くの効能を与える
▶ 種類によって香りは様々
▶ ビールの苦み=ホップの苦み
水が重要な理由って?=ビールの9割を占める重要な原料
昔から「良い水場」のところはお酒も美味いと聴いたことがありませんでしょうか?
お酒を造るだけでなく食品を作る際に必要不可欠な素材である「水」。
ビールも麦芽を煮出してビールの素である「麦汁」を作るところから大量の水を使います。
ビールを作る醸造所は基本的に水のきれいな場所(のどかな田舎や山奥・川のそばetc)から
地下水を汲み上げられる場所など「上質な水が手に入る」場所を拠点にしてビール造りをされています。
ポイント
<水が大事な理由>
① 水の美味しさ=ビールの美味しさに直結
② 水質で作りやすいビールの系統が分かれる
参考
<軟水と硬水>
① 水の中に含まれている「ミネラル分」によって分けられる
→ミネラル分:(少)軟水 : 硬水(多)
② ミネラル分が多いとビールの味や色味に大きく影響
→硬水だと 色の濃いビール
→軟水だと 色の薄いビール
硬水・軟水による色味の違いは紅茶を例にして説明されることが多いです。
イギリスのような硬水地域は色味が濃い紅茶が出来上がり、日本のように軟水だと明るい色味になると言われます。
この水質の違いで思わぬビールを生み出してしまったのが、チェコのブランド「ピルスナーウルケル」でした。
ピルスナーウルケルを醸造しているエリア「プルゼニュ」はヨーロッパでも珍しい軟水の地域。
そうとは知らずに連れてこられた時の醸造家がビールを仕込んだところ「黄金色」に輝くラガービールを作り出したと伝えられています。
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【レビュー】チェコ ピルスナーウルケル:味の特徴とこんなひとにオススメ!
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ビールを造る際、醸造所では自分たちの作るビアスタイルに合わせた水質に調節してから水を使います。
そうしないと、安定したビールの品質をお約束できないから。
メモ
<この章のまとめ>
▶ 水=硬水・軟水によって色味と味に影響
▶ ビール用に調整された水を使っている(醸造用水)
酵母=仕込んだ麦汁をアルコール飲料に変えてくれる生命の力
参照画像:サッポロビール公式HPより
そして最後の原料として紹介するのが酵母です。
最初に解説した原料=麦芽を素にして煮出した汁「麦汁」を作るのですが、酵母はそのあとの工程で使われます。
というのも、ビールがビール足る所以は「シュワっとしたアルコール飲料」。
残念ながら麦汁のままでは、時間が経ってもアルコールにはなりません。
そこで使われるのが「酵母」。
微生物の1種である彼ら(?)は多くの種類が存在していて、私たちの生活の中にたくさん漂っています。
その中で「糖分をエサにしてアルコールと炭酸ガスを生み出す」酵母がいます。
それが「ビール酵母」と呼ばれる存在。
麦汁の中に含まれる糖分をエサに活動してどんどんアルコールと炭酸ガスを排泄。
こうしてビールが出来上がっていくわけです。
(酵母の機能についてより知りたいひとは第1回目をご参照)
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【ビールの知識シリーズ①】ビールの種類は2つ覚えればOK!わかりやすく解説します!
続きを見る
ポイント
<酵母とビールの関係>
◆ 酵母の種類によって出来上がりが変わる!?
→酵母の役割はアルコールと炭酸ガスを生み出すだけじゃない
→酵母の種類でビールの香り・コク・味わいに大きく影響
→スッキリした味わいを生み出す酵母や
こってりしてコクのある味わいを生み出す酵母など様々
◆ ビアスタイルに合う酵母は大体決まっている
IPAを作るときに相性の良い酵母や
スタウトを作るときに相性の良い酵母など
自分の作りたいスタイルに合った酵母がある
この酵母の種類は各ブルワリー(大手も同様)ごとに使っている酵母はバラバラ。
例えば日本の大手がリリースしているピルスナービールでも味がそれぞれ違うのは使っている酵母の種類が大きく影響しています。
(例:アサヒビール・キリンビール・サッポロビール・サントリービール)
管理人も将来「ファントムブルワリー」を目指す傍ら、先日茨城県のクラフトブルワリーに1回目の試作を作ってもらいました。
当初、設計図としてはコクのあるフルーツビールを目指していましたが出来上がったのはキリリとしたアッサリテイストのビール。
ビール造りの奥深さと難しさを感じた体験でした。
(ご興味があれば、ぜひ)
ビール用の酵母だけを活かして生産されるようになったのは今から100年ほど前。
以後、大手ブルワリーは「自分たちの味」を継承していくために独自の酵母を培養して増やしています。
自社専用の酵母はもはやコカ・コーラのレシピなみに固く守り続けなければならない財産となっているのです。
メモ
<この章のまとめ>
▶ 酵母=麦のジュース(麦汁)をビールに作り変える存在
▶ ブルワリーごとに使っている酵母が違う
▶ 酵母の個性がそのブルワリーのビールを決める
補習:米やコーンスターチって原料じゃないの?副原料の役割
ここまでがビールにおける原材料の解説でした。
もっと深堀しても良いのですが、本記事が初心者向けのため大まかな内容をお伝えさせて頂きました。
残りは副原料の話題です。
ポイント
<副原料ってなに?>
=主原料の4つ以外に使われる素材のこと
<何のために使うの?>
=ビールの味調整や酵母の発酵補助・香り付けに使われる
<米やコーンスターチって副原料?>
=YES 日本の法律では使って良い副原料は決まっている
一例:香辛料・ハーブ・野菜・食塩やみそ・カツオ節・・・
米やコーンスターチ・糖類も副原料
参照画像:よなよなビール公式HPより
本当にかつお節の風味が感じられるビールなので、かなり攻めているブランド。
このように副原料はブルワリーが「こんなビールを楽しんでもらいたい!」というコンセプトで使われているケースが多いです。
または日本の大手ビールに多いのが味わいをスッキリさせるための補助原料として使用しています。
もちろん、ドイツのように「ビール・ホップ・水」だけでビールを造りなさい!という法律の下で作られたビールも大変美味しいです。
ただ、ここでお伝えしたいことは副原料が入っていることが不純でドイツ式ビールが純粋という話ではないのではという考え方。
たくさんの海外ビールブランドをレビューしていると、正直「この副原料は入れない方が美味しいんじゃ??」と思うブランドも多々ありますが
それを含めて「そのブルワリーの商品コンセプト」だと思うのです。
そのブランドが口に合うか合わないかは他の誰でもない「あなた」が決めて良いこと。
海外を旅する時の好奇心旺盛な気持ちでたくさんのビールブランドと出会ってみてください。
その出会いの場を提供するのが当サイト「ファウンドビア!」の使命だと感じています。
まとめ
結論
- ビールの原料は4つから出来ている
【麦芽】 =ビールの味を決める土台
【ホップ】=香りづけと殺菌効果を与える
【水】 =ビールの9割が水分で出来ている
【酵母】 =発酵させないとビールが出来ない! - 米やコーンスターチも原料じゃないの??
正しくは「副原料」
副原料はビールの出来上がりを補佐する素材
ビール初心者向け解説講座2回目はビールの原料・副原料についてでした。
いかがでしたでしょうか。
もしも、あなたの疑問に対してうまく答えられていたら幸いです。
ではまた!